
あとがき
#100日後に爆発するアフロを最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございます。
この企画を思いついたとき、最初は普通に小説を書こうとしていたのですが、「1日140文字」の制限は思った以上に手強く、最後まで苦しめられました。
細かい描写をすると大事なセリフが入らなくなり、登場人物が会話をすると一往復で文字数が足りなくなるのです。
そこで、描写は脚本のト書きのように「状況だけを書く」、セリフは「アフロくんには喋らせない」という方法で書きました。実は、100日間アフロくんは一度も喋っていないのです。
これが逆に夢を見ていることの証明になり、夢から覚めた後の漫画に活かされたと思っています。
登場する人の名前を、「登場順に縦読みするとクイズの答えになる」と決めていたのに、間違えて「チャッカマン」を先に登場させてしまうというハプニングもありました。
レ点で辻褄を合わせるという苦肉の策は、クイズの難易度を上げることにも繋がり、我ながらファインプレーだと思っています。
#100日後に爆発するアフロは、あるフレンドさんのメッセージがきっかけで思いついた企画です。
彼は虐待といじめを経験し不登校になっていた学生さんでした。Sくんと呼ぶことにします。
アフロくんがTwitterをはじめたばかりで、何をつぶやいていいのか本を読みながら手探り状態のとき、スプラトゥーンで知り合ったSくんが不登校になっていることを知り、何かできることはないかと考え、毎朝のツイートを思いつきました。
#おはようアフロ
— アフロくん (@afro_ikasumi) June 22, 2022
☀️おはようございますっス☀️
元気な人は元気に
普通の人はそれなりに
調子の出ない人はゆっくり
とりあえず一杯だけ
お水を飲むっス🚰✨
#おはようアフロ
— アフロくん (@afro_ikasumi) June 23, 2022
☀️おはようございますっス☀️
元気な人は皮膚が焦げるくらい
普通の人はそれなりに
調子のでない人窓際で
太陽の光を浴びるっス。
#おはようアフロ
— アフロくん (@afro_ikasumi) June 24, 2022
☀️おはようございますっス☀️
元気な人は踊りながら
普通の人は腰に手を当てて
調子の出ない人はゆっくり
とりあえず1杯
お水を飲むっス🚰✨
しばらく続けていると、Sくんから「お水のんだ」「カーテン開けた」と連絡がくるようになり、Twitterの可能性を考えるようになりました。
日が暮れてから活動するSくんを、午前中に布団から出す方法はないかと思い、イカスミカフェのイラストを描いてくださっている「カカポさん@kakapo_green」にお願いして、朝ツイにストレッチを取り入れてみました。
#おはようアフロ
— アフロくん (@afro_ikasumi) July 5, 2022
✨☀️おはようございますっス☀️✨
元気な人はお昼まで
普通の人は5回くらい
調子の出ない人は1回だけ
アフロとストレッチするっス☀️✨ pic.twitter.com/uo23rf4tkd
#おはようアフロ
— アフロくん (@afro_ikasumi) July 6, 2022
✨☀️おはようございますっス☀️✨
元気な人は飽きるまで
普通の人は 30秒〜1分
調子の出ない人はちょっとだけ#アフロとストレッチ をするっス☀️✨ pic.twitter.com/SNSkWE6Q9r
#おはようアフロ
— アフロくん (@afro_ikasumi) July 14, 2022
✨☀️おはようございますっス☀️✨
元気な人は 脱臼するまで
普通の人は 8秒×5回
調子が出ない人は 少しだけ
🕺#アフロとストレッチ するっス💃 pic.twitter.com/BhGV5pugH4
元気じゃないSくんを基準にしていたので、元気な人に厳しい内容になりました、元気な人たちごめんなさい。
ある日Sくんから「学校に行きたいが3割、ちゃんとした大人になりたいが7割、強い人になりたいが90割」と、ゴリラみたいな割合の目標が届いたところから「100日後に爆発するアフロ」の企画はスタートします。
残念ながら、ちゃんとした大人じゃないし、握力も人並みな店長はアレコレ本を読み漁り、アダルトチルドレンというキーワードに辿り着き、これを軸にシナリオを作りました。
アダルトチルドレンとは1970年代のアメリカで「アルコール依存症の親の元で育ち、成人した人を指す言葉」として生まれました。
家族がアルコール依存症者の対応で手いっぱいになり、愛情不足で成人すると、低い自尊心や屈辱感を持ち、他人を支配したり、他人に必要とされることで自尊心を満たそうとするという考え方が背景にある言葉です。
アダルトチルドレンというワードが日本に入ったのは1989年。アルコール依存症がアメリカほど問題になっていなかった日本では、ざっくり「生きにくさを感じて悩んでる人を指す言葉」として広まり、「毒親」という言葉へと派生します。
日本では、アダルトチルドレンという言葉の曖昧さや安易な使われ方が敬遠され、精神医学から排除された一般用語になっていますが、アメリカのセラピスト「W.クリッツバーグ」が、アダルトチルドレンを「6タイプに分けた分析」が面白かったので、「ヒーロー(英雄)」「スケープゴート(生贄)」「ロスト・ワン(いない子)」「クラン(道化師)」「プラケーター(慰め役)」「イネイブラー(援助者)」のカセットが挿さった子供を登場させ、アフロくんが抜く(安易に状況を変えようとする)というエピソードを入れました。
ちなみに、無責任に状況を変えようとしたことでアフロくんの具合が悪くなり、心ある大人たちに(こっそり)助けられるエピソードでは、店長のお母さんの実家(三重県)の「大内山牛乳」、カカポさんが住んでいる札幌の「サツラク牛乳」、マナーキーさんが住んでいる神奈川の「きんたろう牛乳」を『ハルーカ・ア・ヤーセ』として(口実にして)飲ませ、「アドバイス」をもらうことで回復していく様子を描きましたが、マナーキーさんが「そんな変な名前の飲み物ねーよ」って言うセリフがお気に入りです。
昨年の秋頃、彼は自分の力で学校に通い始めたので、このエピソードは必要なくなるという嬉しい誤算となりましたが、最終回のコメントに「カセットの話が良かった」という感想を多く寄せていただき、先人たちが編み出した「心をこめる」という表現技法の偉大さを改めて感じた店長なのでした。
最後になりますが、突然の出演依頼を二つ返事で承諾してくださった「マナーキーさん(@gallerymanarchy)」「カレーコさん(@Miluneo)」「ぼんさいさん(@favorite_Bonsai)」、後半のイラストと最終話の漫画を描いてくださった「カカポさん(@kakapo_green)」、爆発オチの相談に乗ってくださった爆発オチのスペシャリスト「櫻さん(@suou_akani)」、そして、あとがきまで読んでくださったアナタにこの場を借りてお礼申し上げます。
イカスミカフェ店長
・アダルトチルドレン・シンドローム(W.クリッツバーグ)
・Adult Children of Alcoholics Syndrome(W.クリッツバーグ)
・朝顔、昼顔、夕顔、夜顔。一つだけ違う種類があります。|tenki.jp
・サイフォンコーヒーの抽出温度はいったい何度?|COFFEE ROASTERY 101
・100日後に死ぬワニ|100日後に死ぬワニ 公式
おまけ❶店長の絵コンテ

