アイス・バケツ・チャレンジ

 2019年12月9日、難病ALSと闘った「ピート・フレイツ氏」が死去。フレイツ氏は「アイス・バケツ・チャレンジ」を社会現象にした人です。

ピート・フレイツ氏

アイス・バケツ・チャレンジってなーに?

 ALS患者の支援やALSの研究を支援するために『氷水が入ったバケツを頭からかぶる』または『アメリカALS協会へ寄付をする』または『その両方を行う』という運動がアイス・バケツ・チャレンジです。

ルール
  1. 「アイス・バケツ・チャレンジを受ける(支援する)」ことを宣言し、氷水が入ったバケツを頭からかぶり、次にチャレンジを受けてもらいたい人を2〜3人指名する。
  2. この様子を撮影した動画をfacebookやTwitterなどのSNSに公開してチャレンジ完了。
  3. 指名された人はチャレンジを受ける場合「氷水をかぶる」または「100ドルをALS協会に寄付する」または「その両方を行う」のいずれかを24時間以内に選択する。

※氷水を頭からかぶることや寄付をすることは強制ではなく、日本ALS協会も公式サイトや報道を通じて「無理はしないように」と要請している。

 アメリカで「チャリティのために氷水が入ったバケツを頭からかぶる行為」は、ALSとは関係なく昔から存在していて、もともとは「寄付する団体は自由に決めることができる」ルールだったそうです。

 アメリカの文化を基準にして、アメリカからはじまった運動なので、他国では「寄付を選ばなかった人が罰ゲームで氷水をかぶらされている」という誤解も生まれました。

 また、アメリカ国内でも、夏に深刻な水不足になるカリフォルニア州では「水の無駄遣い」という意見があったようで、アイス・バケツ・チャレンジは当時も今も賛否両論が分かれます。

氷水は祝福を意味する

 アメリカのスポーツ界には『氷水=祝福』という文化があり、エンジェルスの大谷翔平選手がメジャー初のホームランを打った試合でも、インタビュー中にチームメイトからバケツに入った氷水を豪快にかけられるシーンがありました。

 アイス・バケツ・チャレンジの『氷水をかぶる』と『寄付をする』は、どちらもポジティブな選択であり、『氷水が入ったバケツを頭からかぶる』という行為には、『アナタの病気が良くなりますように』という意味が込められているそうです。

最初にバケツをかぶったのはだーれ?

 フレイツ氏があまりにも有名なので、本国アメリカのニュース記事でも「アイス・バケツ・チャレンジを発案した人」「アイス・バケツ・チャレンジの発起人」として紹介されていましたが、「氷水をかぶる行為」は昔からあったチャリティ運動のひとつです。

 また、TIME誌によると「ALSのために最初にバケツをかぶった」のもフレイツ氏ではないようです。

2014年7月15日

 当時、ALSとは関係なく流行していた「アイス・バケツ・チャレンジ」のバトンは、プロゴルファーのクリス・ケネディ氏に渡りました。

 ケネディ氏は氷水を頭からかぶると「アメリカALS協会」を支援先に選びました。妻の従姉妹ジャネッテさんの夫、アンソニーさんがALS患者だったからです。

 このときの動画こそ「ALSとアイス・バケツ・チャレンジが繋がった最初の投稿」で、ケネディ氏はTIME誌のインタビューに『ただアンソニーを笑顔にしたかっただけなんだ』と語りました。

 ケネディ氏は次のチャレンジャーにジャネッテさんを指名し、ジャネッテさんは翌日の16日にチャレンジ動画を投稿、このリレーはじわじわと広がっていき、ついにALS患者のパット・クィン氏に繋がります。

 クィン氏は2013年にALSと診断されていました。彼がSNSでこの動画をシェアするとチャリティは一気に拡散し、彼のネットワークからヨーロッパで野球選手として活躍していたピート・フレイツ氏に繋がったのです。

 フレイツ氏はクィン氏よりも1年早くALSの診断を受けていたので、ALSコミュニティとも深く関わりを持っていました。

 そして、フレイツ氏は出会う人すべてと友人になる特技の持ち主だったそうで、その巨大なネットワークがこのチャリティを爆発的に加速させたのかもしれません。

アイス・バケツ・チャレンジへの批判

 フレイツ氏から拡散されたアイス・バケツ・チャレンジのバトンは世界を駆け巡り、我が国「日本」にも届けられました。

 日本では残念ながら「チャリティやボランティアは偽善批判の対象になりやすい傾向」にあり、人助けの世界指数では世界最下位になったこともあるので、アイス・バケツ・チャレンジに対しても批判的な意見が多かったようです。

批判的な意見
  • 水をかぶるだけでALSの理解には繋がっていない
  • ただのふざけたパフォーマンスである
  • 企業や有名人の売名行為である

『氷水が入ったバケツを頭からかぶる』というパフォーマンスだけがリレーされ、『消防車を利用して水を浴びるパフォーマンス』に協力していた消防士が誤って電線に接触して感電死する事故や、『空中消火用の航空機から1,500リットルの散水を受けるパフォーマンス』を行った男性が重症を負うなど、アイスバケツチャレンジにまつわる事故が相次いだことも、このチャリティに対する批判的な感情を生んだ原因のひとつかもしれません。

 全ての人に支持される行為が稀有であるように、アイス・バケツ・チャレンジが全ての人に支持されることは不可能かもしれません。

 しかし、その行為について、よく知らないままアイス・バケツ・チャレンジを批判していた人も、自身の大切な人が難病を患い、その治療法を確立するために、自分ができることが「アイス・バケツ・チャレンジ」しかなかったとしたら、なんの躊躇もなくバケツに氷水を汲むのではないでしょうか。

 例えば、その行為についてよく知らない人に批判されたとしても。

アイス・バケツ・チャレンジの成果

 このチャリティによって集まった資金で『プロジェクトMinE』というALSの研究プロジェクトが立ち上がり、プロジェクトMinEによって「NEK1」という遺伝子が発見されました。

 この遺伝子の研究は、会話、食事、運動、呼吸の能力を体から奪うALSの治療法の開発につながると期待されています。

 アイス・バケツ・チャレンジはわずか数週間で8850万ドル(約90億円)の寄付金を集め、ALS協会はプロジェクトMinEを含む複数の研究プロジェクトへの資金提供を可能にしました。

「世界の科学者による協力が、ALSのアイス・バケツ・チャレンジによる寄付金によって実現され、このような重要な発見につながりました、大勢の人々の思いが実を結んだ最高の例です」

ジョン・ランダース|プロジェクトMinE 主任

映画『ギフト 僕がきみに残せるもの』

 この記事を読んでくださり、少しでもALSに興味をもってくださった方にオススメしたい映画です。

あらすじ

 アメリカン・フットボールの最高峰、NFL。ニューオーリンズ・セインツのスティーヴ・グリーソンは特別なヒーローだった。ハリケーン“カトリーナ"に襲われたニューオーリンズの災害後初の、市民が待ちに待ったホームゲームでチームを劇的な勝利に導いたからだ。

 それから5年後。すでに選手生活を終えていたグリーソンは、病院でALS(筋萎縮性側索硬化症)だと宣告を受ける。そして、同じ頃、妻ミシェルの妊娠がわかった。初めて授かった子供。だが自分は、生きている間に、我が子に会うことができるのだろうか。生まれ来る子のために、自分は何が残せるのだろうか。グリーソンは決めた。まだ見ぬ子どもに贈るために、毎日、ビデオダイアリーを撮り続けると。

 本作は、2010年からグリーソン自らが撮影をはじめた映像と、彼の旧友であり介護者ともなった2人のフィルムメーカーがグリーソン一家とともに暮らしながら撮影した映像からなるパーソナルなビデオダイアリーから生まれた。1500時間を超えるその映像は、病気に立ち向かう姿や、不安、妻とのケンカや絶望など、きれいごとだけではなく、ありのままの姿を見せ、ユーモアを忘れずに日々を乗り越えていく彼らの姿を映し出し、大きな感動をもたらす傑作ドキュメンタリーとなった。 

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