【Wi-Fi(無線LAN)】がオンラインゲームに向いてない理由

ラグの対策【番外編❶-1】

カトルくんのSwitchが通信エラー

 1997年に登場した無線LAN【IEEE 802.11】から20年以上が経過し、ノートパソコンやスマートフォンやタピーオーカが普及した現代。

 Wi-Fi を「ウィーフィー」と読んでしまう人も、無料 Wi-Fi スポットを探し当てた人が「ウィーフィー コール」で称えられる光景もめっきり見かけなくなりました。

ウィーフィー !と叫ぶ人々
出典:ぴちょんさん(bokete

 そして NURO 光auひかり 等、超高速回線の登場で「一般家庭の通信品質は大きく向上」し、「無線LAN でも e-Sports タイトルをプレイ可能!」と謳うハイスペックルーターが販売されました。

『Wi-Fi でオンラインゲームをしてはいけない』と言われた時代は過去の話になろうとしているのでしょうか。

ここWi-Fi繋がる?
出典:こうちゃんさん(bokete

 2020年6月に策定予定の新しいWi-Fi規格【IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)】、そして Wi-Fi 6 対応の新型ルーター商戦が盛り上がりを見せているゲーミングデバイス市場。

 しかし、イカスミカフェは、Wi-Fi 時代の流れを逆行するかのごとく『Wi-Fi(無線LAN)がオンラインゲーム(※)に向いていない理由』を、なるべく詳しく、かつ分かりやすく解説してみたいと思います。

※FPS、TPS、格闘ゲーム等、競技性の高いオンラインゲーム。

  1. Wi-Fiってなーに?
  2. 『電子レンジ』と『近所のWi-Fi』と【2.4GHz】
  3. 『気象レーダー』と『船舶レーダー』と【5GHz】
  4. 『OFDM』と『MU-MIMO』と【Wi-Fi 5】
  5. まとめ
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❶Wi-Fiってなーに?

 さて、この手の話では絶対に避けては通れない「そもそもの話」の時間です。

 あっ、今、飛ばそうとしましたね。

 ちょっと待ってください、基本が分かってないと後でココに戻ってくる事になるので「Wi-Fiなんか知ってるやい」って方も一応・・・あっ・・・

【IEEE 802.11】シリーズ

 オーストラリアの電気工学者「ジョン・オサリヴァン(John O’Sullivan)」が、ミニブラックホールの爆発で発生する電波を観測する為、ノイズの影響を受けにくいワイヤレスネットワークを作りました。

 この技術が無線LANのコアテクノロジーの開発に繋がり特許を取得、ジョン・オサリヴァンはWi-Fiの父と呼ばれています。ありがとうお父さん。

 Wi-Fi の歴史は進化の歴史、規格がアップデートする度に通信速度が速くなり、セキュリティは強固になっていきました。

策定時期規格速度
1997年6月802.112Mbps
1999年9月802.11a
802.11b
54Mbps
11Mbps
2003年6月802.11g54Mbps
2009年9月802.11n
【Wi-Fi 4】
600Mbps
2013年12月802.11ac
【Wi-Fi 5】
6.9Gbps
2020年6月802.11ax
【Wi-Fi 6】
9.6Gbps
未定802.11ay20Gbps

 IEEE 802.11ax は『2020年6月策定予定』なのに、この記事を書いている「2020年2月現在」すでに【Wi-Fi 6】対応製品が販売されているのは、無線LANの業界団体である Wi-Fi Alliance が、正式に規格を策定する前に「フライングで認証プログラムをスタート」している為です。(802.11n や 802.11ac の時もフライングで販売されました)


【2.4GHz帯】と【5GHz帯】

 日本の Wi-Fi の電波は【2.4GHz帯】と【5GHz帯】の周波数帯を使います。(もうすぐ【6GHz帯】も使えるようになって『Wi-Fi 6E』という拡張規格が策定されますが今回は割愛させて頂きます)

【2.4GHz帯】

「IEEE 802.11/b/g/n/ax」で使える周波数帯です。障害物を回り込むのが得意なので比較的遠くに届く電波なのです。

 1階のリビングにルーターが設置してあって、2階の寝室で猫の動画を観る場合は【2.4GHz】が向いてます。

【5GHz帯】

「IEEE 802.11a/n/ac/ax」で使える周波数帯です。他の電波の干渉が少ないので安定していますが、直進性が強い電波なので障害物に弱いのです。

 ルーターが設置してあるリビングで、電子レンジでみたらし団子を温めながら、Bluetooth イヤホンを使って猫の動画を観る場合は【5GHz】が向いてます。

※【5GHz】は電子レンジと Bluetooth の電波干渉を受けない為。


【送信】と【受信】を同時にできない

 有線LANで使用する『LANケーブル』の中には「送信用の線」と「受信用の線」が別々に入っていて、データの送信と受信を同時に行えます。

 しかし、無線LANで使用する『電波』は「送信も受信も同じ周波数を使う」ので、データの送信と受信を同時に行うことができません。

 オンラインゲームに例えると『こちらの攻撃入力データ』の送信中は『敵の回避行動データ』を受信できないことになり「ラグ」や「同期ズレ」の原因になります。

 実際の通信は凄い速さで『送信』と『受信』が交互に繰り返されるので、熟練プレイヤーでなければこの「違和感」を知覚する事はできません。

 この時点で感の良いアナタは『Wi-Fi はオンラインゲームに向いてなさそうじゃわいふぁい』と思っているはずですが、せっかくなので他にも『Wi-Fi がオンラインゲームに向いてない理由』を見ていきましょう。


❷『電子レンジ』と『近所のWi-Fi』と【2.4GHz】

 Wi-Fi の通信には電波を使います。そして電波には「干渉」という通信を妨害する現象があります。

 アナタが使用している Wi-Fi 電波と同じ周波数帯に別の電波が存在すると、通信速度が落ちたり通信エラーが起きたりするのです。

 Wi-Fi の【2.4GHz帯】が使用する周波数帯は「2.412GHz〜2.484GHz」で、これを13〜14チャネルに分割して利用しています。(14チャネルは IEEE 802.11b だけ)

 各チャネルは『5MHz』間隔なので、1チャネル=[2.412GHz]、2チャネル=[2.417GHz]、3チャネル=[2.422GHz]・・・・・14チャネル=[2.484GHz]という具合に、【2.4GHz帯】のチャネルは『5MHz』ずつズレていきます。

 ( ˘ω˘ ) スヤァ… 

 OK、大丈夫です。アナタがこの中途半端な数字のラリホーに負けないように、そして「チャネルってなんやねん、キャメラみたいに言うなよ腹立つなー」という苛立ちに負けないように、今回の記事はいっぱい画像を作りました。

 いっぱい画像を作ったので、しばらく Photoshop のアイコンは見たくありません。

※通信の世界ではchannelをチャネルと呼びます。


【2.4GHz帯】のチャネル

(図1)

【2.4GHz帯】の各チャネルはそれぞれ「22MHzの帯域幅」を持っています(図1)。だから、13チャネルもあるのに、実際に同時に使用できるチャネルは「3チャネル」しかありません。(IEEE 802.11b は 14ch があるので、4チャネル同時に使用できます)


同じ周波数帯に別の電波が存在すると

Wi-Fi 2.4Ghz 帯で干渉が起きる図
(図2)

 もし、❶ch❻ch⓫ch を利用中に ❾ch の電波が存在すると、❻ch⓫ch の電波に干渉して、お互いに通信速度が低下したり通信エラーを引き起こしたりする現象が起きるのです(図2)。

【2GHz】さんは、なぜこんなに態度が大きいのでしょうか。もっとお行儀よくおっちんできないのでしょうか。

電車の座席に寝そべるPAOさん

『電子レンジ』は【2.450GHz】

電子レンジのマイクロ波の周波数
(図3)

「電子レンジを使うと Wi-Fi で通信エラーが起きる」という有名な話がありますが、これは「電子レンジが加熱に使うマイクロ波の周波数が【2.450GHz】だから」なのです。

 総務省の北陸総合通信局による「子供を見守るICT技術に関する調査検討会」において「電子レンジの中心周波数から 30MHz 以上離れた周波数帯では、速度低下の影響が見られなかった」という実験結果が報告されています(法務省:周波数共用特性試験

 この実験結果が正しければ「1チャネル と 2チャネル以外は、電子レンジの影響を受けやすい」ことになります(図3)。

※IEEE 802.11b なら14チャネルも影響を受けにくい


ちょっと電子レンジを捨ててきます

 OK、ちょっと落ち着きましょう。実は電子レンジを捨てたり、使わなかったりしてもあまり意味はありません。

 なぜなら、電子レンジが稼働中に発するマイクロ波は「50mくらいは普通に干渉する」ので、アナタが電子レンジを使っていなくても、隣の部屋の人がみたらし団子を電子レンジで温めれば必ずその影響を受けます。いいえ、違います、みたらし団子が悪いわけじゃありません。

 もっと言うと、コンビニの『業務用電子レンジ』のマイクロ波は隣のビルにまで干渉するので、企業のネットワーク担当は無線LANのAP(アクセスポイント)の設置場所を決定する前に「必ず近隣のコンビニの位置をチェックする」のが常識なのです。


『近所の Wi-Fi』が干渉する

 同じ理屈でアナタが使用している Wi-Fi のチャネルと、近隣で使用している Wi-Fi のチャネルが同じだったり、近い周波数帯のチャネルだったりすると速度低下や通信エラーの原因になります。

 この種類の干渉は『電子レンジ』による干渉よりも厄介です。

 なぜなら、電子レンジが発する周波数は【2.450GHz】と決まっているし、使用する時間帯も回数もある程度は予測できますが、近隣の Wi-Fi 電波のチャネルはバラバラですし、24時間入れ替わり立ち替わり誰かが使っています。

 また、Wi-Fi(無線LAN)は自分が使用するチャネル上で他の通信が行われていない事を確認してからデータを送信する『CSMA/CA』という仕組みを使います。

 この仕組みの為、近隣で通信中の信号を受信した場合は『自分の通信を開始しない』というルールに従って、問答無用で通信エラーを引き起こします。

 Wi-Fi 6 では「電波を発している端末」や「その相手のアクセスポイント」が『自分の通信による影響を受けない』と判断した場合は通信できるようになるのですが、同じ周波数帯の電波干渉の問題は Wi-Fi 6 でも避ける事はできません。

 そこで、インターネットを検索すると『だったら【5GHz帯】を使えば良いんじゃない?』と教えてくれます。

 はたして本当にそうなのでしょうか?


❸『気象レーダー』と『船舶レーダー』と【5GHz】

 世の中に Wi-Fi 接続の端末が溢れかえったことで、私達が生活している空間は【2.4GHz帯】の電波で大渋滞が起こり、東名高速道路(上り)の海老名JCT〜横浜町田の夕方みたいになっています。

 そして【2.4GHz帯】が同じ空間に3チャネルしか存在できない以上、マンションの同じフロアに4部屋以上あれば、必ずどこかの部屋で通信速度の低下や通信エラーが起きるのです。

 そこで【5GHz帯】の電波が登場。この大渋滞による「干渉」の問題を解決してくれました。ありがとう 5GHz 。

 では 2GHz帯の時と同じく図を見ながら説明していきましょう。

ボードカモンヌ!

【5GHz帯】のチャネル

Wi-Fi 5GHz 帯の図
(図4)

【5GHz帯】のチャネルは屋内専用の『W52』と『W53』、そして屋外でも使用できる『W56』の「3つのグループ」に別れています(図4)。

 そして【5GHz帯】が使用する周波数帯は「5.180GHz〜5.700GHz」で、これを19チャネルに分割して利用します。

【5GHz帯】の各チャネルは「20MHzの帯域幅」を持っています。

 あれ?

 2GHz帯が「22MHzの帯域幅」だったせいで3チャネルしか使えなかったのに、2MHzしか減っていません。

 コーヒーに角砂糖を22個入れてた人が「今日からダイエットするぞ!」と一念発起して20個に減らしたようなものです。

 ところがどっこい【5GHz帯】のチャネルは、隣のチャネルまでの周波数も『20MHz』間隔なので、36チャネル=[5.180GHz]、40チャネル=[5.200GHz]、44チャネル=[5.220GHz]・・・・・64チャネル=[5.320GHz]という具合に『20MHz』ずつズレていきます。

 ( ˘ω˘ ) スヤァ… 

OK!ボードカモンヌ!

【2GHz帯】は近い周波数のチャネルと干渉する

Wi-Fi 2.4Ghz 帯で干渉が起きる図
(図5)

【2GHz帯】は各チャネル自身は『5MHz』なのに「22MHz」の幅が必要なので隣り合ったチャネルが「干渉」していました(図5)。

【5GHz帯】は隣のチャネルにも干渉しない

[W52][W53]

5Ghz 帯では干渉が起きない図1
(図6)

[W56]

5Ghz 帯では干渉が起きない図2
(図7)

【5GHz帯】は各チャネル自身が『20MHzの帯域幅』なので、隣り合ったチャネルにも干渉することがなくキレイに並んでいます(図6、図7)。

 つまり「同じ空間で19チャネルをすべて同時に使用できる」ので、近隣のWi-Fi が干渉することで起きる「速度低下」や「通信エラー」が激減するという理屈なのです。

 ありがとう 5GHz 、ありがとう Wi-Fi Alliance の賢い人。

キレイに座席に座るカトルくん達

『気象レーダー』は【5GHz】

 こんなに優秀な【5GHz帯】なので、4K動画やハイレゾ音源のストリーミングでもストレスの無い再生を可能にしてくれました。

 だったらオンラインゲームも【5GHz帯】で接続すれば、Wi-Fi でもストレス無くプレイできるんじゃないでしょうか?

 いいえ、残念ながら競技性の高いオンラインゲームにとって【5GHz帯】は【2.4GHz帯】よりも致命的な問題があり注意が必要なのです。

【5GHz帯】を利用している電波

5GHzの利用状況
(図8)

 実は【5Ghz帯】の電波を利用しているのは Wi-Fi だけではありません。

『気象レーダー(5.25〜5.3725GHz)』や『船舶・航空レーダー(5.35〜5.85GHz)』、そして『地球探査衛星』や『軍事レーダー』等の、電子レンジなんてどうでもよくなるスケールの電波が【5GHz帯】を利用しているからなのです(図8)。


ルーターを窓際に置いてはいけない

 このうち[W53]と[W56]のグループには『レーダーが特定のチャネルを使用している場合はそのチャネルを回避する』ことが義務付けられているので、ルーターが各種レーダーの通信を感知した場合、強制的に通信を中止し別のチャネルに切り替える【DFS※】という機能が作動します。

Dynamic Frequency Selection

【DFS】が作動すると「変更後のチャネルで通信しているレーダーの有無」を確認する為に「1分間通信ができなくなる」のです。

 なので、レーダーの影響を受けやすい窓際にルーターを設置することはネットワークエンジニアの間では御法度です(電波は「ガラス」を透過する為)。

 もしアナタの会社の 無線LAN アクセスポイントがすべて窓際ギリギリに設置されているとしたら、ネットワーク担当が会社に不満を感じている可能性があります。次の休憩時間にコーヒーをおごり、さりげなく相談に乗ってあげましょう。


ちょっとレーダーをへし折りに行ってきます

 OK、ちょっと落ち着いてください。レーダーはあちこちに設置されていますし、400km以上の範囲に届くものだってあります。

 例えば、大阪市内に住んでいるとしたら『関西国際空港』と『大阪空港(伊丹空港)』の両方の気象レーダーが普通に飛んでいますし、イージス艦が本気を出したら東京から大阪にレーダーが届きます。

 そうです、どうにもならない事をあれこれ考えるより、みたらし団子でも食べながら、窓からできるだけ離れた場所にルーターを移動させましょう。


❹『OFDM』と『MU-MIMO』と【Wi-Fi 5】

NURO光のルーター(HG8045Q)
NURO光のレンタル機器
HG8045Q:Wi-Fi 5

 2020年2月現在、新しい無線LAN規格『Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)』が登場し『Wi-Fi 6 対応ルーター』が市販されました。

 とは言え、一般的なインターネット回線のレンタル機器はまだ【Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)】にしか対応していません。

 そこで【Wi-Fi 5】がオンラインゲームに向いてない理由を解説しつつ、【Wi-Fi 6】ではどうなのかを紹介して最後にしたいと思います。


【Wi-Fi 5】は同時に1台のデバイスしか通信できない

【Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)】に採用されている通信方式(変調方式)を『OFDM(※)』と言います。OFDMは「1つのチャネルを1つのデバイスで占有する」方式なので『同時に通信できるのは1台まで』なのです。

※Orthogonal Frequency Division Multiplexing

「えっ、でも、フレッツ光のホームゲートウェイの仕様書に『利用可能端末台数:最大32台』って書いてありますよ?アメ車で引きずり回しますよ?」

 って思うでしょ?『利用可能端末台数』や『無線接続台数』として書かれている台数は「同時に通信できるデバイスの数」を表しているのではなく『接続を許可するデバイスのMACアドレスを登録できる数』なのです。

 なので、ルーターの仕様書に『無線接続端末最大32台』と書いてあっても『同時接続台数64台』って書いてあっても、【Wi-Fi 5】の変調方式が『OFDM』である限り「同時に通信できるのは1台」なのです(図9)。

「えっ、でも、パソコンとゲーム機とスマホ2台、同時にインターネットできてますよ?ざまあないねフォー!ざまあないねフォー!」

 って思うでしょ?『OFDM』は「1つのチャネルを1つのデバイスで占有」して通信していますが、通信を待っている他のデバイスを見つけると「凄い速さで占有するデバイスを切り替える」のです。

OFDM

OFDMの仕組み
(図9)

 例えば、子供ちゃん2人がそれぞれ「2台のスマホでYouTubeの動画を視聴」していて、お父さんが「パソコンでネットサーフィン」をしていて、お母さんが「Switchでオンラインゲーム」をしている家庭のルーターが【Wi-Fi 5】対応の製品なら、1台ずつ凄い速さで接続を切り替えて順番に通信しているだけなのです(図9)。

『OFDM』の場合、10台、20台と端末が増えれば順番待ちの時間も増えるので「通信速度の低下」や「接続エラー」の原因になります。

 どんなに通信速度が出ていても、ルーターのスペック(処理速度)が低ければ YouTube の動画がカクカクしたり、Switchで通信エラーが起きたりするのはこの為です。

 そこで良心的なメーカーは仕様書に『最大接続数:32台(12台推奨)』とか書きます。

『OFDM』は大道芸の「皿回し」のようなものなので、ルーターのスペックを超える数のデバイスを同時に接続しないようにしましょう。

皿回しをするカトルくん

【Wi-Fi 6】最大9台のデバイスが同時に通信できる

 新たに登場した無線LAN規格【Wi-Fi 6】に採用されている通信方式(変調方式)を『OFDMA(※)』と言います。OFDMA は1つのチャネルを「リソースユニット」という単位で区切り、別々のデバイスで利用できるようにしました。

 この技術によって『最大9台の端末が同時に通信できる』ようになったのです。

※Orthogonal Frequency Division Multiple Access

OFDMA

OFDMAの仕組み
(図10)

 この技術により、接続端末が少なければ「大幅にラグを解消した通信」をすることが出来るので、競技性の高いオンラインゲームをストレス無くプレイする事ができるかもしれません。

『OFDMA』はデバイス毎に「皿回し担当」がいるようなものなので、通信速度の低下や通信エラーが起こりにくいと言えます。

みんなで皿回し

 が、しかし、残念ながら Nintendo Switch はもちろん、PS4 もOFDMA に対応していないのでこの恩恵を受けることはできません。OFDMA 対応のゲーム機が登場するまでは「Wi-Fi(無線LAN)」でのプレイは控え、競技性の高いオンラインゲームのプレイは「有線LAN」にした方が良いでしょう。


『MU-MIMO』があるじゃない

 インターネット歴が長い人の中には「【Wi-Fi 5】でも『MU-MIMO』を使えばいいじゃない」と言う人がいるかもしれません。

 MU-MIMO は「Multi User MIMO」の略で、MIMOは『マイモ』と読みます。

『MU-MIMO』は「送信側」と「受信側」の双方で複数のアンテナを用意し、電波の通信経路を多重化する技術です。

MU-MIMO

4×4 MU-MIMO の図
(図11)

※注意:GIFアニメを作る事に疲れたので静止画で行くことにしました、脳内で「→」をピコピコ動かしてください。

 通信経路を4つに増やす「4×4」の MU-MIMO では、データを4つに分けて送信する事で理論上は4倍の速度でデータを送信する事が可能ですし、この技術を応用して「3×3」のノートパソコンと「1×1」のスマホへ同時にデータを送信する事が可能なのです(図11)。

 が、しかし【Wi-Fi 5】での『MU-MIMO』は「下りのみ対応」の技術である上に規格としては「オプション扱い」なので、Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)対応機器だからといって『MU-MIMO』が使えるとは限りません(使えたとしても「下りのみ」)。

 なのに「MU-MIMO 対応のルーターを購入すれば Switch や PS4 のラグが改善する」と思っている人が多いので注意が必要です。

 そもそも、MU-MIMO で通信を行うには「送信側」と「受信側」の双方で『MU-MIMO』に対応している必要があります。

 例えば、「3×3」のノートパソコンと「1×1」のスマホが同時に通信を行う為には「3×3」のノートパソコンは3つの経路に分割されたデータを受け取った後、それぞれのデータを組み合わせて復元する必要がありますし、「1×1」のスマホは「3×3」のデータを受けずに、「1×1」のデータだけをビームフォーミングで受信する必要があるので、「受信側」も『MU-MIMO』に対応している必要があるのです(図11)。

 そして、残念ながら、Nintendo Switch も PS4 も『MU-MIMO』に対応していません。MU-MIMO 対応のゲーム機が登場するまでは「Wi-Fi(無線LAN)」でのプレイは控え、競技性の高いオンラインゲームのプレイは「有線LAN」にした方が良いでしょう。


まとめ

【Wi-Fi 6】の『MU-MIMO(下り)』は必須

 Wi-Fi 5 でオプション扱いだった『MU-MIMO』ですが、【Wi-Fi 6】では「上りも下りも対応」になり、下りに関しては「標準装備しなければならない機能」となりました(上りはオプション扱い)。

 これは【Wi-Fi 6】が『IoT(Internet of Things)』(モノがインターネットで通信をする)という未来の為に策定される規格だからなのです。

 例えば、冷蔵庫がインターネットに接続していて「外出先からスマホで中が見れる」なら「卵を買い忘れる事」も「食パンを買いすぎる事」も無くなります(店長はよくやります)。

 あらゆる「モノ」がインターネットに同時接続する時代がすぐそこまで来ていますし、オンラインゲームを Wi-Fi 接続でストレス無く遊べる時代も近いうちに訪れるでしょう。

 でも、まだもう少し時間が必要みたいなので、現状は「有線LAN接続の方がオンラインゲームに向いている」と言えるようです。

 あれ?おかしいな、よく見たらゲーム機にケーブルが繋がってないぞ?ってうっかりさんはこの機会に有線LANでの運用を検討してみて下さい。そして、無線LANルーターの購入を検討している方には「来るIoT時代」を見据えて【Wi-Fi 6 対応】のルーターをオススメします。

 それでは皆様、快適なゲームライフを♪


LANアダプタ

ラグの対策【中級編❸】LANアダプタを替える:参照


LANケーブル

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ラグの対策【中級編❷】LANケーブルを替える:参照


ゲーミングルーター

ラグの対策【中級編❹】ゲーミングルーターを使う:参照


もっと詳しく知りたい方へ

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※Wi-Fi 6 の技術的な情報はこの本を参考にさせて頂きました。

0123456789 ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ もくじ
0123456789 ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ もくじ

CHAPTER 1
ラグの対策【準備編】

まずは回線をチェックしましょう

  1. はじめに
  2. Nintendo Switch の回線速度テスト
  3. Ping値の測定

CHAPTER 2
ラグの対策【基本編】

今さら聞けないラグの基本

  1. ラグいと起きる10のコト
  2. そもそもラグってなーに?
  3. じゃぁ同期ズレってなーに?
  4. ラグい方が有利じゃないの?
  5. チックレートってなーに?

CHAPTER 3
ラグの対策【初級編】

今すぐ出来るラグの対策

  1. ラグの原因になる10のポイント
  2. ルーターの再起動
  3. タコ足配線もラグの原因です
  4. テレビの設定
  5. Switch本体の設定
  6. ラグの多い時間帯

CHAPTER 4
ラグの対策【中級編】

ゲーマーのラグ対策

  1. 中級編のはじめに
  2. LANケーブルを替える
  3. LANアダプタを替える
  4. ゲーミングルーターを使う
  5. ゲーミングモニターを使う
  6. ゲーミングヘッドセットを使う
  7. 【v6プラス】についての注意
  8. 回線業者とプロバイダーを替える

CHAPTER 5
ラグの対策【上級編❶】

フレッツ光回線の高度な設定

  1. Nintendo Switch を
    NATタイプAにする方法❶
    【NATタイプAってなーに?】
  2. Nintendo Switch を
    NATタイプAにする方法❷
    【IPアドレスの固定】
  3. Nintendo Switch を
    NATタイプAにする方法❸
    【ポートの開放】
  4. フレッツ光のHGW(ホームゲートウェイ)に他社ルーターを接続する方法
  5. v6プラスで Nintendo Switch をNATタイプAにする方法はない

CHAPTER 6
ラグの対策【上級編❷】

NURO光回線の高度な設定

  1. NURO光で Switch を
    NATタイプAにする方法❶
    【ONUの型番を確認する】
  2. NURO光で Switch を
    NATタイプAにする方法❷
    ONUが【F660A】の場合
  3. NURO光で Switch を
    NATタイプAにする方法❸
    ONUが【HG8045Q】の場合
  4. NURO光のONUにゲーミングルーターを接続する方法

CHAPTER 7
ラグの対策【番外編❶】

その他のラグ対策

  1. 【Wi-Fi(無線LAN)】がオンラインゲームに向いてない理由
  2. 【NURO光】が導入されていないマンションに「ひとりでも」NURO光を開通させる方法