CHAPTER 3-6

数的不利

「数が多い方が有利」である事が道理ならば、その逆の「数が少ない方が不利」である事もまた道理至極なのです。回線落ちや圧倒的な戦力差によって『慢性的な数的不利』が起きる場合はどうしようもありませんが、「一時的な数的不利」を少しだけ耐え忍ぶ事はそれほど難しい事ではありません。

❶数的不利の戦い方

 敵軍より自軍の数が少ないということは「どこかで味方が足りていない」という事です。この「不足」をどう補えばよいでしょうか?

 イカスミ流は「撃ち合いよりタチマワリで勝つ」がコンセプトなので、テクニック的な話は極力控えたいのですが(解説する程のテクニックを持っていません)、数的不利の場合はどうしても弾際(たまぎわ)の話をするしかないので、スポーツ理論を応用した『個人戦術』として少しだけ触れておきます。

①【1vs2】の戦い方

挟撃されないポジショニング

 数的有利の時には上の図のオレンジチームのように「挟撃(きょうげき:前後や左右から挟み撃ちにすること)」が定石です。つまり、逆の立場である「数的不利」の時には「挟撃されない」ように気をつけましょう。

ディレイを使って相手の行動を遅らせる

【ディレイ】:遅らせる、延ばす。

 上の図も同じ1vs2の形ですが、敵「オフェンス1(O-1)」と「オフェンス2(O-2)」の両方を正面の視界に入れ、背後や側面から攻撃されるリスクを消しています。

 そして、敵のメインブキの射程に入らないよう距離を取り、さらに間合いを詰められないように【ヌル】またはボムでけん制しています。

 敵のどちらかが無理に突っ込んで来た場合は倒してもOKですが、こちらからは絶対にしかけません。

 こうして「味方が前線に帰陣するまで時間を稼ぐテクニック」を【ディレイ】と言い、好き嫌いに関わらず「チームスポーツでは必須の戦術」です。

 スプラトゥーンでは【ディレイ】を10秒以上続けられれば、味方が前線に復帰してくれるので、数的不利を10秒耐え忍ぶイカは全国的に重宝されます。

 もし、フレンドさんが3人しか集まらないしょっぱい日は、「2vs1を耐え忍ぶ練習」をすると対人能力も鍛えられるのでオススメなのですが、練習がキライな人は3分で飽きて口数が減るので様子をみてマリオカートに切り替えましょう。

②【2vs3】の戦い方

挟撃されないポジショニング

 2vs3の時も同じです。実戦の敵味方の距離は一定ではありませんし、ステージには高低差もあるので上の図のようにキレイな陣形にはなりません。重要な事は「味方との距離感」と敵3人を正面の視界に入れて「挟撃のリスクを消す」ポジショニングを取ることです。

1vs2を2つ作るイメージ

 上の図をよく見ると、実は「1vs2の形を2つ作っているだけ」である事が分かります。元々はサッカーやバスケで「カウンター」を受けた時の守備の考え方なのですが、プロ選手は非常に素早くこの形を作ります。慣れるまでは「ある程度」の感覚で練習してみましょう。

流れの中で「擬似2vs1」を作る

「味方との距離感」が合っていると「オフェンス2(O-2)」に対してだけは「数的有利」が作れる事が分かります。もしディレイを続けながら味方と連携して「O-2」を仕留めることが出来れば、味方のリスポンを待たずに「数的不利」を無かった事にできますが、ガチマで初対面の人とこれを狙うのは現実的ではないので、タイミングが合えば狙ってみる程度の気持ちで。

③【1vs3】の戦い方

逃げる

 あれこれ考えるよりも自陣に引いて「味方と合流する時間を早める」「味方のスパジャンを促す」ことを優先しましょう。そもそも1vs3でも勝てる相手ならタチマワリは必要ありません。

隠れる

 障害物の後ろでじっとしている方が、味方のスパジャンを促すことも出来るので有効な場合があります。敵の動きと味方のリスポンのタイミングを考えて使い分けましょう。

数的不利はデスしない事が最も大事

 蛮勇を発揮して囲まれたり、運よく1人と相撃ちになった所で悪い状況が長引くだけです。守備戦術【ディレイ】は上手く使えるようにトレーニングしてみてください。きっと戦力が拮抗しているマッチングで競り勝つ試合が増えると思います。

❷マラドーナの5人抜き

【数の力】を無力化する程の圧倒的な【個の力】があったとして、それを努力だけで手に入れる事は難しいかもしれません。あのマラドーナの5人抜きだって1vs5では無いのですから。

【1vs5】

 1986年、メキシコワールドカップで生まれた「ディエゴ・マラドーナの5人抜き」が、もしも上の図のような状況からはじまったのであれば、【数の力】に勝る圧倒的な【個の力】は存在すると言えるでしょう。しかし実際はそうではありません。

①【1人目と2人目】(1vs2)

 イングランド戦、後半9分、マラドーナはハーフウェイライン手前の右サイド寄りでパスを受けます。この時、イングランドのFW「ピーター・ベアズリー」とMF「ピーター・リード」の2人がプレスをかけましたが、マラドーナは素早く縦にドリブルして、2人を置き去りにします。

 1vs2の形ではありますが、縦にドリブルをしかけるマラドーナに対して真横からのプレスはまったくプレッシャーにならないので、2人抜いたけど「相手にしたのは1人だけ」という見方もできます。

②【3人目】(1vs1)

 右サイドから加速するマラドーナに、イングランドのDF「テリー・ブッチャー」がプレスをかけます。マラドーナは中央に切り返してブッチャーを抜き去ります。

③【4人目】(1vs1)

 中央に切り込むマラドーナの前に、イングランドのDF「フェンウィック」が立ちはだかります。今度はこれを右にかわしてゴール前へ。

④【5人目】(1vs1)

 最後はGK「ピーター・シルトン」がマラドーナの前に飛び出しますが、フェンリックの時と同じく右にかわしてシュート。これが『20世紀最高のゴール』と讃えられるマラドーナの5人抜きの内訳です。

【数の力】>【個の力】

 感の鋭いアナタはもうお気づきかもしれませんが、マラドーナは1人で5人を相手にして勝ったのではなく、1vs1に5回勝ったのです。

 もちろん、サッカーの母国イングランド代表を相手に、1vs1を5連勝すること事態が圧倒的な【個の力】なのですが、マラドーナは決して【数の力】を無視していません。

 何故なら、最初に抜いた1人目と2人目は、ゾンビのようにマラドーナを後ろから追いかけて来ますから、3人目の対応に時間がかかればあっという間に囲まれて、1vs3の形を作られてしまいます。マラドーナは「抜いた相手が追い付く前」に次の相手をかわし続けたのです。

 スプラトゥーンでも、強いイカさんは複数の敵を同時に倒しているのではなく、1vs1の勝負に連続して勝っているのです。逆に言えば、なるべく複数を同時に相手にしないように立ち回っているのです。

「数的不利は味方が戻るまでデスしない事を優先する」「1vs1はなるべく勝つように頑張る」これを意識するだけで対人戦の見え方が変わるかもしれません。

❸負けない戦い方と勝つ戦い方

「孫子の兵法【第四章・軍形篇】の一節」で孫子は、攻める時と守る時について語っていますので、いつものように原文、書き下し文、現代語で解説してみます。

原文

孫子曰、昔之善戰者、先爲不可勝、以待敵之可勝、不可勝在己、可勝在敵、故善戰者、能爲不可勝、不能使敵之可勝、故曰、勝可知、而不可爲、不可勝者、守也、可勝者、攻也、守則不足、攻則有餘、善守者、藏於九地之下、善攻者、動於九天之上、故能自保而全勝也

書き下し文

(孫子曰く、昔の善く戦う者はまず勝つべからざるをなして、もって敵の勝つべきを待つ。勝つべからざるはおのれにあるも、勝つべきは敵にあり。ゆえに善く戦う者は、よく勝つべからざるをなすも、敵をして勝つべからしむることあたわず。ゆえに曰わく、勝は知るべくして、なすべからず、と。勝つべからざる者は守るなり。勝つべき者は攻むるなり。守るはすなわち足らざればなり、攻むるはすなわち余りあればなり。善く守る者は九地の下に蔵れ、善く攻むる者は九天の上に動く。ゆえによくみずから保ちて勝を全うするなり)

現代語訳

「ヌルフフフ・・・孫センセーです。前回、前々回と毒舌キャラが続いたので抜擢されました、それでは現代語訳、殺(や)ってみましょうかヌルフフフ・・・。戦いの巧い人の勝ち方にはセオリーがあります。【①負けない態勢を整える】【②相手がミスするのを待つ】この順番ですよヌルフフフ・・・。①は自分次第ですけど、②は相手次第ですよね?だから、負けない態勢を整えたからといっても「絶対勝つ」とは限らないのです。そうです「勝ち方を知っている」事と、「それを実行できるかどうか」は別の話なのですよヌルフフフ・・・。(やってみたら店長と話し方が同じだったのでとにかくヌルフフフって言います)次に、負けない戦い方をする時と、勝つ戦い方をする時の話をしましょう。味方の数が少なくて「足りない時」は負けない戦い方をする時です。つまり「いのちだいじに」ですね。守備が上手な人は9つの地形に紛れるようにじっとしています。逆に味方の数が多くて「余っている時」は勝つ戦い方をする時です。つまり「ガンガンいこうぜ」です。攻勢に出るのが上手な人は9つの空を自在に飛び回るように動きます。こんな感じですから、戦いの巧い人は守備の時は確実に戦力を温存して、攻撃の時は確実にカウントを削りに行くのですヌルフフフ・・・」

 数的不利の時は「攻めずに守れ」と孫子も言ってます。戦力差がある時こそ、焦れずに味方を待てるかどうか、「イカフェッショナルのメンタリティ」が問われる時かもしれません。

 また、公式大会で勝ち残る強いチームには「エースがリスポン中に急に強くなるイカさん」がいて、エース復帰までの前線を良く守っています。

 超人的な反応速度に恵まれず、対人能力に自信がないイカさんが「ファンタジスタ」や「エース・ストライカー」になる事は困難だとしても、彼らに活躍してもらうタチマワリが出来れば「イカフェッショナル」になる事はそれほど難しい事ではありません。さぁ、今日も味方の為に汗をかきましょう、そして勝利の為に賢く走りましょう。

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