
「数が多い方が有利」であることが道理ならば、その逆の「数が少ない方が不利」であることもまた道理至極なのです。回線落ちや圧倒的な戦力差によって『慢性的な数的不利』が起こる場合はどうしようもありませんが、「一時的な数的不利」を少しだけ耐え忍ぶことはそれほど難しくありませんし、勝率に大きく影響するスキルなので、余裕があれば練習してみてください。
もくじ
❶数的不利の戦い方
相手チームより味方チームの数が少ないということは「どこかで味方が足りていない」ということです。この「不足」をどうカバーすればよいでしょうか?
イカスミ流タチマワリは「撃ち合いよりタチマワリで勝つ」がコンセプトなので、テクニック的な話はなるべく控えたいのですが(解説するほどのテクニックを持っていません)、数的不利の場合はどうしても弾際(たまぎわ)の話をする必要があるので、スポーツ理論を応用した『個人戦術』として、ほんの少しだけ触れておきます。
①【1vs2】の戦い方
挟撃されないポジショニングをする

数的有利のときは上の図のオレンジチームのように、前後や左右から挟み撃ちにする「挟撃(きょうげき)」が定石です。
なので、逆の状況である数的不利のときは「挟撃されない位置」にポジショニングするよう気をつけましょう。
ディレイを使って相手の行動を遅らせる

ディレイ【delay】:遅れること。遅れ。
出典|デジタル大辞泉(小学館)- weblio
上の図も同じ1vs2の形ですが、相手チームの「オフェンス1(O-1)」と「オフェンス2(O-2)」の両方が視界に入るポジショニングをして、背後や側面から攻撃されるリスクを消しています。
そして、敵のメインブキの射程に入らないよう距離を取り、さらに間合いを詰められないように【ヌル】またはボムでけん制しています。
敵のどちらかが無理に突っ込んで来た場合は倒してもOKですが、こちらからは絶対にしかけません。
このように「味方が前線に帰陣するまでの時間を稼ぐテクニック」を【ディレイ】といい、好き嫌いに関わらず「チームスポーツでは必須の戦術」です。
スプラトゥーンでは【ディレイ】を10秒以上続ければ、味方が前線に復帰してくれるので、数的不利は「10秒間たえられるように意識」して練習してみましょう。
4リグに行こうと思っていたのに、フレンドさんが3人しか集まらない日などは、プライベートマッチで「2vs1を耐え忍ぶ練習」をすると、対人能力も鍛えられてオススメなのです。
でも「…つまんなくね?」って言われたら、すぐマリオカートなどに切り替えましょう。
②【2vs3】の戦い方
2vs3のときも同じです。実戦の敵味方の距離は一定ではありませんし、ステージの高低差もあるので下図のようなキレイな陣形にはなりませんが、重要なのは「味方との距離感」と敵3人を正面の視界に入れ「挟撃のリスクを消す」ポジショニングを取ることです。
1vs2を2つ作るイメージ

上図をよく見ると、実は「1vs2の形を2つ作っているだけ」であることが分かります。
これはサッカーやバスケなどで「カウンター」を受けたときの「数的不利での守備の考え方」なのですが、プロ選手は非常に素早くこの形を作ります。
味方の動きに合わせて「距離感」をつかんでみましょう。
流れの中で「擬似2vs1」を作る

「味方との距離感」が合ってくると「オフェンス2(O-2)」に対して「数的有利」が作れるようになります。
もし、ディレイしながら連携して「O-2」を仕留めることが出来れば、味方のリスポンを待たずに「数的不利」を解消することができますが、ガチマで初対面の人とこれを狙うのは現実的ではないので、タイミングが合えば狙ってみる程度に考えた方がよいでしょう。
③【1vs3】の戦い方
逃げる

私たち一般的なプレイヤーが「1vs3」の状況になった場合は、あれこれ考えるよりもさっさと逃げる方がよいです。
余裕があれば自陣側にひいて、「味方と合流する時間を早める」「味方のスパジャンを促す」ための工夫をしてみましょう。そもそも1vs3で勝てる相手なら戦術(タチマワリ)など必要ありません。
隠れる

障害物の後ろでじっとしている方が、味方のスパジャンを促すことが出来るので有効な場合があります。敵の動きと味方のリスポンのタイミングが合えば色々な場所で実験してみましょう。
数的不利はデスしないことが最も大事

蛮勇を発揮して囲まれたり、運よく1人と相撃ちになった所で「悪い状況が長引くだけ」だったりします。守備戦術【ディレイ】は余裕があれば上手く使えるように練習してみてください。
きっと戦力が拮抗しているマッチングなどで「競り勝つ試合」が増えると思います。
❷マラドーナの5人抜き
【数の力】を無力化するほどの圧倒的な【個の力】があったとして、それを努力だけで手に入れることは難しいかもしれません。あのマラドーナの5人抜きだって1vs5では無いのですから。
【1vs5】

1986年、メキシコワールドカップで生まれた「ディエゴ・マラドーナの5人抜き」が、もしも上図のような状況からはじまったのであれば、【数の力】に勝る圧倒的な【個の力】は存在すると言えるでしょう。しかし実際はそうではありません。
①【1人目と2人目】(1vs2)

イングランド戦、後半9分、マラドーナはハーフウェイライン手前の右サイド寄りでパスを受けます。このとき、イングランドのFW「ピーター・ベアズリー」とMF「ピーター・リード」の2人がプレスをかけましたが、マラドーナは素早く縦にドリブルして、2人を置き去りにします。
1vs2の形ではありますが、縦にドリブルをしかけるマラドーナに対して真横からのプレスはまったくプレッシャーにならないので、2人抜いたけど「相手にしたのは1人だけ」という見方もできます。
②【3人目】(1vs1)

右サイドから加速するマラドーナに、イングランドのDF「テリー・ブッチャー」がプレスをかけます。マラドーナは中央に切り返してブッチャーを抜き去ります。
③【4人目】(1vs1)

中央に切り込むマラドーナの前に、イングランドのDF「フェンウィック」が立ちはだかります。今度はこれを右にかわしてゴール前へ。
④【5人目】(1vs1)

最後はGK「ピーター・シルトン」がマラドーナの前に飛び出しますが、フェンリックのときと同じく右にかわしてシュート。これが『20世紀最高のゴール』と讃えられるマラドーナの5人抜きの内訳です。
【数の力】>【個の力】
感の鋭いアナタはもうお気づきだと思いますが、マラドーナは1vs5に勝ったのではなく、1vs1に5回勝ったのです。
もちろん、サッカーの母国イングランドを相手に、1vs1で5連勝すること自体が圧倒的な【個の力】なのですが、マラドーナは決して【数の力】を無視していません。
何故なら、最初に抜いた1人目と2人目は、ゾンビのようにマラドーナを後ろから追いかけて来ますから、3人目の対応に時間がかかればあっという間に囲まれて、1vs3の形を作られてしまいます。マラドーナは「抜いた相手が追い付く前」に次の相手をかわし続けたのです。
スプラトゥーンでも、プロゲーマーや実況者さんなど「強イカさん」は、複数の敵を同時に倒しているのではなく、1vs1の勝負に連続して勝っているのです。逆にいえば、なるべく複数を同時に相手にしないように立ち回っているのです。
「数的不利では味方が戻るまでデスしないことを優先する」「1vs1はなるべく勝つように頑張る」これを意識するだけで、対面での新しい発見があるかもしれません。
❸負けない戦い方と勝つ戦い方
「孫子の兵法【第四章・軍形篇】の一節」で孫子は、「攻めるとき」と「守るとき」について語っているので、いつものように原文、書き下し文、現代語で解説してみます。
孫子曰、昔之善戰者、先爲不可勝、以待敵之可勝、不可勝在己、可勝在敵、故善戰者、能爲不可勝、不能使敵之可勝、故曰、勝可知、而不可爲、不可勝者、守也、可勝者、攻也、守則不足、攻則有餘、善守者、藏於九地之下、善攻者、動於九天之上、故能自保而全勝也
孫子曰く、昔の善く戦う者はまず勝つべからざるをなして、もって敵の勝つべきを待つ。勝つべからざるはおのれにあるも、勝つべきは敵にあり。ゆえに善く戦う者は、よく勝つべからざるをなすも、敵をして勝つべからしむることあたわず。ゆえに曰わく、勝は知るべくして、なすべからず、と。勝つべからざる者は守るなり。勝つべき者は攻むるなり。守るはすなわち足らざればなり、攻むるはすなわち余りあればなり。善く守る者は九地の下に蔵れ、善く攻むる者は九天の上に動く。ゆえによくみずから保ちて勝を全うするなり。
ヌルフフフ…孫センセーです。前回、前々回と毒舌キャラが続いたので先生が抜擢されました、それでは現代語訳、殺(や)ってみましょうかヌルフフフ…。戦いの巧い人の勝ち方にはセオリーがあります。【①負けない態勢を整える】【②相手がミスするのを待つ】この順番ですよヌルフフフ…。①は自分次第ですけど、②は相手次第ですよね?だから、負けない態勢を整えたからといっても「絶対勝つ」とは限らないのです。そうです「勝ち方を知っていること」と、「それを実行できるかどうか」は別の話なのですよヌルフフフ…。(店長と話し方が同じだったのでとにかくヌルフフフって言います)次に、「負けない戦い方をするとき」と、「勝つ戦い方をするとき」の話をしましょう。味方の数が少なくて「足りないとき」は負けない戦い方をするときです。つまり「いのちだいじに」ですね。守備が上手な人は9つの地形に紛れるようにじっとしています。逆に味方の数が多くて「余っているとき」は勝つ戦い方をするときです。つまり「ガンガンいこうぜ」です。攻勢に出るのが上手な人は9つの空を自在に飛び回るように動きます。こんな感じですから、戦いの巧い人は守備のときは確実に戦力を温存して、攻撃のときは確実にカウントを削りに行くのですヌルフフフ…。
孫子は、数的不利のときは「攻めずに守れ」と言っています。ピンチの状況で焦れずに味方を待てるかどうか、「イカフェッショナルのメンタリティ」が問われるときなのかもしれません。
また、公式大会で勝ち残る強いチームには「味方がリスポン中に急に強くなるイカさん」がいて、エースの復帰まで前線を良く守っています。
プロゲーマーのような「超人的な反応速度」に恵まれず、対面に自信がないイカさんが「ファンタジスタ」や「ストライカー」になることは難しいかもしれません。
しかし、彼らが「より自由に暴れられる」ようにタチマワルことは、「考えること」を続けていれば必ず出来るようになります。
さぁ、今日も味方のために汗をかきましょう、そして勝利のために賢く走りましょう。