電気を使って仕事をするプロフェッショナルはケーブルにこだわります。プロフェッショナルなギタリストはギターとアンプをつなぐケーブル(シールド)にこだわり、プロフェッショナルなVJは機材とモニターをつなぐ映像ケーブルにこだわり、プロフェッショナルなゲーマーはゲーム機とインターネットを繋ぐLANケーブルにこだわるのです。そして、彼らは口を揃えて2回いうのです。
「ケーブルは俺の血管だ、いや…むしろ…俺の血管だ!」
ONUやルーターの性能が高くても、それらを繋ぐLANケーブルの品質が低ければ、本来のパフォーマンスが発揮されませんし、そんなに高いものではないので、なるべくこだわってみましょう。
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LANケーブルは種類がいっぱい
LANケーブルは「形状」「長さ」「Cat(カテゴリー)」など、いくつかの種類に別れていて、家電量販店に行くと鼻水が飛びそうなくらいあります。
「光信号だからどのケーブルでも速いよ旨いよ安いよ」って思いがちですが、光信号なのは部屋の壁からでている白くて細い線(光ファイバー・ケーブル)までです。
その白くて細い線が、最初に繋がっている機械(ONU)の中で、光信号は電気信号に変換され、その電気信号はノイズ(電磁波)の影響を受けるので、「LANケーブルの品質は通信品質に影響する」という理屈なのです。
家電量販店に行った時に鼻水が飛ばないように、しっかり予習してからお出かけ下さい。
LANケーブルの形状
スタンダード(ノーマル)
BSLS6ANU05BK|BUFFALO
結論からいうと「スタンダード(ノーマル)タイプ」が最も通信品質が高い形状なので、スタンダード(ノーマル)をチョイスしましょう。
LANケーブルの中に入っている銅はノイズの影響を受けやすく、ノイズに強い素材を使ったり、特殊なコーティングをしたり、防御力を高めた結果「硬くて取り回しが悪い」という欠点があります。
フラット
BSLS6AFU10BK|BUFFALO
薄くて使い勝手が良いフラットタイプです。ドアの隙間や階段を這わせて、2階の自室に繋げるわんぱくな使い方ができます。
薄い分ノイズの影響を受けるので、通信エラーの原因になるかもしれません。薄くて弱い。そう、ヤムチャです。
スリム(やわらか)
LD-GPAYT/BK20|エレコム
スタンダードタイプの防御力と、フラットタイプの取り回しの間を取ったタイプ。
ノイズに対しての防御力はスタンダードタイプに及びません。スリムで弱い。そう、ヤムチャです。
LANケーブルの長さ
各家庭の通信機器の設置場所に合わせるために、LANケーブルには様々な長さの製品がありますが、結論からいうと、「LANケーブルは短ければ短いほど良い」です。
しかし、通信機器との距離や、家族との心の距離の関係で、「どうしても短くできない場合」があると思います。
できるだけ頑張って頂きたい、そして、家族とは仲良くして頂きたい。
ちなみに、店長は神経質なので、オンラインゲーム用の機器は全て「0.5m」でキッチリカッチリ繋いでます。
キッチリカッチリ。
どうして長いとダメなの?
LANケーブルの中には銅線が入っています。ホントは銀の方が電気を通しやすいのですが、コストを考えて銅が採用されました。しかし、銅は長ければ長いほど信号が弱まる性質を持っています。でも、100m前後までなら問題なく通信が出来るので、家庭用のLANケーブルの規格は100mまでとなりました。
あなたの部屋には、テレビやPCや電子レンジなど、電気を使う製品がいっぱいあって、それらは目に見えないノイズを発生させ、電磁波となって空気中に存在しています。
LANケーブルの中の銅は、「ノイズ」の影響を受けやい性質も持っているので、ケーブルが長ければ長いほど、電磁波に触れる面積が多くなり、ラグや通信エラーを引き起こしやすくなるのです。
また、家電量販店で必要以上に長いLANケーブルを買ってしまい、余った部分をクルクルするのも要注意です。
LANケーブル自身が「自分でノイズを発生するおバカさん」なので、クルクルすると「じじじ自分のノイズででで自分ががが自分ががが自分のノイズふぁぁぁぁぁ」ってなって、ラグや通信エラーの原因になります。
店長も「問題ない…いつかきっと…この長さが必要になる日が来るだろう…」とか、ブツブツいいながらクルクルしていましたが、通信機器の位置はだいたい決まってるので、その日が来たことはまだありません。もし来たら新しいのを買いましょう。
LANケーブルのカテゴリー
カテゴリー表
カテゴリー | 通信速度 | 伝送帯域 | シールド |
---|---|---|---|
Cat.5 | 100Mbps | 100Mhz | UTP / STP |
Cat.5e | 1Gbps(1000Mbps) | 100Mhz | UTP / STP |
Cat.6 | 1Gbps(1000Mbps) | 250Mhz | UTP / STP |
Cat.6A(6e) | 10Gbps(10000Mbps) | 500Mhz | UTP / STP |
Cat.7 | 10Gbps(10000Mbps) | 600Mhz | STP |
Cat.7e | 10Gbps(10000Mbps) | 1Ghz(1000Mhz) | STP |
Cat.8.1 | 40Gbps/25Gbps | 2Ghz(2000Mhz) | STP |
Cat.8.2 | 40Gbps/25Gbps | 2Ghz(2000Mhz) | STP |
LANケーブルには「Cat.5」「Cat.5e」「Cat.6」「Cat.6A」「Cat.7」「Cat.7e」「Cat.8.1」「Cat.8.2」と、8段階のカテゴリがあって、それぞれ性能が違います。「えっ、Cat.6e があるから9段階じゃないの?」って思ったアナタ、今日から友達です。
昔々、アメリカの工業会が「Cat.6」を作りました。その後、民間のLANケーブルメーカーが、より性能の良い「Cat.6e」の開発に成功しました。慌てて工業会もCat.6eと同等の性能を持つLANケーブルを開発したのですが、「真似してないしぃー。ずっと前から思いついてたしぃー。ホントだしぃー」と「6A※1」って名前をつけました。でも性能は同じなのでした。めでたしめでたし。
※1)JEITA(電子情報技術産業協会)は「6A」を正しい規格表記としていて、「6e」は誤表記としています。
通信速度と伝送帯域
カテゴリー | 通信速度 | 伝送帯域 | シールド |
---|---|---|---|
Cat.5e | 1Gbps(1000Mbps) | 100Mhz | UTP / STP |
Cat.6 | 1Gbps(1000Mbps) | 250Mhz | UTP / STP |
数字が並んでると眠くなりますが大丈夫です、「通信速度」の数字が大きいと『速い』、「伝送帯域」数字が大きいと『多い』って覚えましょう。
ついでに、CAT.5e と、CAT.6 を比べてみましょう。どちらも「通信速度」は同じ1Gbps ですが、Cat.5e の「伝送帯域」が 100Mhz なのに対して、Cat.6 は 250Mhz もあります。
最高速度(通信速度)「100km」で走れる高速道路があったとき、道の幅(転送帯域)が「2車線」より「4車線」の方がたくさん車が移動できる、というくらいの意味なのです。
結局どれを選べばいいの?
ここまで読んだ誰しもが、
「なるほど、つまり、スタンダードタイプで、なるべく短くて、Cat.8のケーブルを選べばいいんですね、OK、わかった、100本下さい」
ってなると思いますが、一般家庭でLANケーブルを使う場合のベストチョイスは「Cat.6A(6e)」のLANケーブルなので、間違えずに「CAT.6A(6e)」をチョイスして下さい。
プロが「Cat.7」と「Cat.7e」を使わない理由
「CAT.7」と「CAT.7e」は産業用機械に使用するために設計されました。とってもノイズの多い場所(工場とか)で使う「業務用のLANケーブル」なので、ケーブルの中にノイズを除去するためのアース線(洗濯機のコンセントとかに付いてる緑のやつ)が入っています。
アース線がノイズを拾う
LANケーブルの規格には「UTP」と「STP」というものがあります。
- 【UTP】(Unshielded Twisted Pair)
- アンシールデッドツイストペア
- 【STP】(Shielded Twisted Pair)
- シールデッドツイストペア
アンシールデッド=「非シールド」ってほどの意味なので、UTPは「シールド(アース線)が入ってません」、逆にSTPは「シールド(アース線)が入ってます」ということになります。
カテゴリー | 通信速度 | 伝送帯域 | シールド |
---|---|---|---|
Cat.6A(6e) | 10Gbps(10000Mbps) | 500Mhz | UTP / STP |
Cat.7 | 10Gbps(10000Mbps) | 600Mhz | STP |
Cat.7e | 10Gbps(10000Mbps) | 1Ghz(1000Mhz) | STP |
Cat.7とCat.7eは「STPのみの規格」、つまり「アース線」が入っています。この子達は、強いノイズが発生する場所で使われることが多い「産業用の機械」を接続するために開発され、そのノイズと戦う宿命を背負って生まれたケーブルです。
しかし、一般家庭ではシールドが必要なほど強いノイズは発生しません。
アナタがもし「稼働している産業用機械の下でゲームをしてる人」だったり、あるいは「ものすごい磁場を作る古代兵器の上でゲームをしてる人」じゃない限り、シールドは必要ないので大丈夫です。
そして、古代兵器はとても危ないのですぐに降りましょう。
ゲーム機や家庭用のPCやルーターなどには、Cat.7とCat.7eの規格に準ずるアース機能(拾ったノイズを放出する機能)がありません。
アース線はノイズを拾う性質があり、家庭用機器には拾ったノイズを放出する機能がないので、通常のLANケーブルより通信品質が落ちる可能性があります。
コネクタがCat.7の性能を満たしていない
本来「Cat.7」「Cat.7e」のコネクタの規格は「TERA」か「GG45」か「ARJ45」です。
実は、これらのコネクタでないと性能を発揮しない子達に、無理やりRJ45(一般的なコネクタ)を取り付けて「Cat.7」や「Cat.7e」として販売しているのです。
そうです、そうの通りです、猫に例えるなら、ノルウェージャンフォレストキャットをメインクーンだと思って可愛がるようなものなのです。
あ、どっちもカワイイからどっちでもいいですか?そうですね。
しかし、こんな紛らわしい規格を野放しにして、JEITA(電子情報技術産業協会)はいったい何をしているのでしょうか?
と、思って調べてみたら JEITA はやんわりこういっています。
【Q3】:「RJ45プラグ付の「Cat.7」と表記されたパッチコード が販売されておりますが、これについて教えてください。 これは、Cat.7の性能はあるのでしょうか」
【A3】:「RJ45プラグ(一般的なコネクタ)ではCat.7性能を満足することはできません。よって、これは不適切な表現であり「誤表記」と考えられます。Cat.7性能を満足するプラグは、一般的にTERA、GG45、ARJ45コネクタであり、 よって、「Cat.7」と表記された RJ45プラグ付コードは、Cat.7の性能を満足しておりません」
「LAN配線技術セミナー2018」 |JEITA
そうです。Cat.7なんか満足しておりませんなのです。
プロが「Cat.8」を使わない理由
データセンター用のLANケーブル
「Cat.8」はデータセンター向けに開発されたLANケーブルで、日本では「Cat.8.1(一般的なコネクタのやつ)」と「Cat.8.2(じゃない方のコネクタのやつ)」に分かれています。
「Cat.7」と同様、どちらもSTPなのでシールド(アース線)が入っていて一般家庭向きではないのと、そもそも一般家庭には「40Gbps」で通信する用事がありません。
もし、アナタの実家がデータセンターで、思春期に「俺のパンツ、サーバーで干すなし!」と怒った思い出があるなら、野菜といっしょに Cat.8.1 のケーブルを送ってもらいましょう。
回線速度やPingの測定をすると、たぶん「Cat.6Aと同じ結果」がでるはずです。
もし、明らかに速度が上がったのだとしたら、もともと使っていたケーブルに問題があった可能性があります。
一般家庭では、Cat.6Aの「10Gbps」でさえ持て余しているので、Cat.7 や Cat.8 が必要になるのはまだまだ先の話かもしれません。
でも、どうして、一般家庭で使用しても意味がないモノが家電量販店で普通に売っているのでしょうか?
しかも売り場には「めっちゃ速いでぇ♪1番速いでぇ♪」って書いてあったり、あちこちのブログに「Cat.8にしたら速度が上がった!」とか書いてあったりするのでしょうか?
ええ、そうですね、お茶でも飲みながら、資本主義についてゆっくり考えることにしましょう。
オススメのLANケーブル
- Amazonや楽天でLANケーブルを1本だけ注文すると、たぶん送料の方が高くなるので、めんどくさいですけど近くの家電量販店に出かけましょう。
- 購入前にLANケーブルの【Cat】【形状】【長さ】をよく確認して下さい。
ツメの折れないLANケーブル Cat6a(UTP)
【プロ仕様】パンドウイット シールド LANケーブル CAT6A
知る人ぞ知る「PANDUIT(パンドウィット社:アメリカ)」のLANケーブルです。日本には1974年に入ってきた配線関係の老舗。
パンドウィット社のLANケーブルは、接続機器にアース機能がなくてもノイズの影響を受けない特殊な設計で、素材にコストをかけているので通常よりも細い形状でも通信品質が安定し、国内海外を問わずプロの通信環境を支えています。
一般的なLANケーブルに比べるとかなり高価なので、どうしても長さが必要なときには検討してもいいかもしれません。