ALS患者「武藤将胤さん」が、新しいチャレンジをします。その名も「BRAIN ROBOT STORE(ブレイン・ロボット・ストア)」。脳波でロボットを動かして接客をする実験なのです。
どうしてロボットで接客するの?
「感染防止対策?」と思った方も多いかもしれませんし、実際そういったメリットもあるのですが、この実験で使用されるロボット「OriHime」はコロナ禍のずっと前から活躍しています。
「OriHime(オリヒメ)」は、子育てや単身赴任、入院など距離や身体的問題によって、行きたいところに行けない人のもう一つの身体、「分身ロボット」です。
ALSなどの難病で外に出ることが難しい人が、自宅や病院にいながらでも旅行に行ったり、働いたりすることを実現するサポートをしてくれます。
どうして脳波で動かすの?
ロボットを遠隔操作するもっとも簡単な方法は「コントローラー」を使うことです。わざわざ「脳波」という、高度なテクノロジーを使う必要があるのでしょうか?
武藤さんが罹患しているALSという病気は、意識や五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)、記憶や知性は正常のまま、体を動かす運動ニューロン(運動神経細胞)が侵され、身体が徐々に動かなくなっていき、最終的には瞼(まぶた)さえ開くことが出来なくなる難病です。
このため、病気が進行して指が動かなくなると、「コントローラー」でのロボット操作ができなくなるのです。
OriHime は「視線入力」に対応しているので、眼球が動く限り操作することが可能ですが、最終的に瞼を開くことができなくなると、「視線入力」もできなくなります。
TLS(完全閉じ込め状態)
ALS患者が最も恐怖を抱いている「瞼さえ動かせなくなる最終的な段階」を、「TLS(完全閉じ込め状態)」といいます。
どうか、想像してみてください。
意識はいつものまま、五感もいつものまま、体だけがまったく動かない状態。
目を開けられないので何も見えません。
瞼を通して光を感じられるので、部屋が暗いか明るいかは分かります。
耳は聞こえるので音楽やテレビの音は聞こえます。
アナタに話しかける人の声も聞こえますが、口が動かないので話すことはできません。
顔がかゆくても手が動かせないので掻くことができません。
そして声が出せないのでそれを伝えることができません。
まるで「自分の体に閉じ込められているよう」に感じます。
そして、その状態が怖くて辛くて悲しくても、声を上げて泣くことができないのです。
私の友人は「TLS」になることへの恐怖と、家族の負担になることを恐れ、自ら死を選びました。
もしも、あのとき、脳波でロボットを動かして「寂しいよ」と伝える手段があったら、「大丈夫、手を握ってあげるよ」と答えられる未来があったら、友人には別の選択肢があったかもしれません。
脳波×分身ロボットでALSの未来を変える世界初BRAIN ROBOT STORE
この実験は、脳波ツール開発の「電通サイエンスジャム」、分身ロボットを開発した「オリィ研究所」、そして武藤将胤さんが代表を務める「WITH ALS」がタッグを組み、クラウドファンディングによる支援金で実現します。
今、どこかで TLS(完全閉じ込め状態)の恐怖と向き合っている人に「明日も生きよう」と思える希望を、その人を支えている家族や仲間に「一緒に生きよう」と言える勇気を、どうか少しだけアナタの力をお貸しください。
イカスミカフェ