【v6プラス】についての注意

『オンラインゲームに向いている』と宣伝されている「v6プラス」ですが、「Splatoon(スプラトゥーン)」や「大乱闘スマッシュブラザーズ」など、『P2P通信型のオンラインゲーム』には向いているとはいえないかもしれません。

 回線業者とプロバイダーの話をする前に、僭越ながら少しだけv6プラスの注意点をお話させて頂こうと思います。

※動画の視聴やリモートワークなど「v6プラス」のメリットはたくさんあります。この記事は「v6プラス自体」を否定するためのものではありません。

「v6プラス」ってなーに?

 インターネットでは「通信をしている人が誰なのか」を区別するために、ネット上の住所にあたる「IPアドレス」が必要です。

(図1)

 IPアドレスは【ICANN:アイキャン】(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)という組織が管理していて、プロバイダーなどに割り当ててくれています。

 従来の「IPv4方式」のIPアドレス(例:192.0.001.0)は、32bitで構成されているので「2^32通り(約43億通り)」の組み合わせのIPアドレスが作れます。

 しかし、我らが母星「地球」には、現在70億人くらいのフレンドさんが暮らしているので、全員でマリオカートをしようとすると、37億人くらいインターネットに接続できなくなり、もう、なめこを育てるしかすることがありません。

 そこで、新しく「IPv6方式」のアドレス(例:2001:0db8:xxxx:678:90ab:cdef:xxxx:0123)を作りました。

 今度は128bitで構成されているので「2^128通り(約340澗(かん)通り)」の組み合わせでIPアドレスを作れます。

( ˘ω˘)スヤァ…

 澗(かん)という単位が、あまりピンと来ないので、一緒に数えてみましょう。

  • 一(いち)
  • 十(じゅう)
  • 百(ひゃく)
  • 千(せん)
  • 万(まん)
  • 億(おく)
  • 兆(ちょう)
  • 京(けい)
  • 垓(がい)
  • 秭(じょ、し)
  • 穣(じょう)
  • 溝(こう)
  • 澗(かん)←ココ
  • 正(せい)
  • 載(さい)
  • 極(ごく)
  • 恒河沙(ごうがしゃ)
  • 阿僧祇(あそうぎ)
  • 那由他(なゆた)
  • 不可思議(ふかしぎ)
  • 無量大数(むりょうたいすう)

 つまり「いっぱいあるから無くならないよー」ということです。そして、従来の「IPv4方式」と、新しい「IPv6方式」の両方を使えるサービスの名前が「v6プラス」なのです。

IPv4 と IPv6 の違い

v6プラスのサービス概要|JPNE

 プロバイダーはよく「高速道路の料金所」に例えられますが、IPv4方式のネックはまさにそれで、利用者が多い時間帯に料金所(※網終端装置)が混雑し、渋滞に巻き込まれてしまいます。

「v6プラス」はこの概念を根底から覆しました。『もう、なんか、アレするわ、料金所は通らなくていいにするわ』ってなったので、夜間の混雑時も渋滞しなくなったのです。

※網終端装置は、ISP(プロバイダー)毎に設置される設備なので、契約しているプロバイダーや利用者数が、通信速度や通信品質に影響します。

じゃあ何が問題なーの?

①セキュリティの問題

「IPv6のセキュリティ問題」は、10年以上も前から多くの専門家が警鐘を鳴らしています。

 準備編でも『グローバルIPアドレスは他人に教えないようにしましょう』と書きましたが、「IPv4方式のアドレス」は『あのプロバイダーを利用している、この辺に住んでいる人?』くらいの情報しか追跡できません。

 このため、SNSの情報などとセットで類推しなければ、一般人が個人を特定することは不可能です。

 対して「IPv6方式のアドレス」は、インターネットに接続する機器1つ1つに割り当てられている、【MACアドレス】と呼ばれる識別コードから自動生成されています。

 このため、Switch本体やスマホなどの端末はもちろんのこと、アナタが使用している「LANアダプターのメーカー」まで特定し、半永久的に追跡することが可能です。

②P2P通信型のオンラインゲームに向いてない

 Nintendo Switch に限らず、PlayStation やソーシャルゲームなど、ほとんどのオンラインゲームは、「NAT traversal(NAT越え)」というアルゴリズムで、対戦・協力プレイを可能にしています。

「NAT」は「IPv4専用」の技術なので、オンラインゲームの通信に限っては、IPv6が普及している現在でも「IPv4環境」が基準になっています。

 このため、「v6プラス環境のSwitch」は「オンラインゲーム(IPv4通信)」を行う場合、「MAP-E」という技術を利用てNATを越えます。(図2)

MAP-E
(図2)
  1. HGW(ホームゲートウェイ) を使って Switch の「IPv4パケット」を「IPv6パケット」の中にカプセル化します。
  2. カプセル化した「IPv6パケット」で「NGN(NTT東西IPv6網)」を通過させます。
  3. 「NGN」を通過した「IPv6パケット」は、「BR(Border Relay)ルーター」を使ってカプセル化を解除し、「IPv4パケット」に戻してから通信相手の Switch に送信します。

「カプセル化」と「カプセル化解除」という処理が増えるため、IPv4環境よりも「ラグ」や「通信エラー」の要因が増えます。

③「NATタイプ A」にできない

NATタイプ
(図3)

 マルチプレイのしやすさを表す Switch の「NATタイプ」は、「A、B、C、D、F」の5種類あり、「NATタイプ A」が最もオンラインゲームに向いています。(図3)

「IPv4環境」は、ルーターの設定をカスタマイズすることで「NATタイプ A」にできますが、「v6プラス環境」は、利用できるポート範囲が制限されているため「NATタイプ A」にできません。

 ちなみに、ぷらら光には「v6プラス環境」でオンラインゲームの遅延を下げる「PLALA GGGG光」というサービスがありますが、公式サイトの「よくあるご質問」にも記載があるように、「クライアントサーバー型」のオンラインゲーム向けサービスです。

よくあるご質問|PLALA GGGG光

「Splatoon(スプラトゥーン)」や「大乱闘スマッシュブラザーズ」など、『P2P通信型のオンラインゲーム』はその恩恵を受けられないので注意が必要です。

「Switch本体はIPv6に対応していない」ですし、NATが存在する限り今後も対応することはないと思うので、「ラグの対策」をすべて試しても改善がない場合は、回線業者やプロバイダーの変更を検討することをおすすめします。

おすすめの記事