Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)に「2618-0510」〜「2618-0520」のエラーが出る原因は「NAT越え失敗」です。
この記事では、フレンドさんと遊べない原因の一つである「NAT越え失敗」についての簡単な説明と、その対処法を解説しています。
「NAT」や「NAT越え」そのものを知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
関連記事はじめに
アナタの部屋のルーターに接続している端末が、フレンドさんの部屋のルーターに接続している端末と通信することを「NAT越え」といいます。(図1)
正しくは『NAT traversal(ナット・トラバーサル)』っていうのですが、一般的に「NAT越え」と呼ばれているので、イカスミカフェも「NAT越え」で統一します。
任天堂の公式サポートページには「NAT越え」についてこう書かれています。
「NAT越え」とは、ご自宅のネットワーク機器に割り当てられているIPアドレス(プライベートIPアドレス)とインターネット通信をするためのIPアドレス(グローバルIPアドレス)を変換する処理のことです。うまく処理ができないと、インターネット経由での対戦や協力プレイができない場合があります。
【Switch】エラーコード「2618-0513」|任天堂
実はこれ、「NAT」自体の説明であって「NAT越え」の説明ではないのですが、一般ユーザー向けに「分かりやすく書く必要」があるので、任天堂の公式サイトとしては間違っていません。
これまで、イカスミカフェも「なるべく専門的な解説はしない」をモットーに記事を書いてきましたが、今回の「NAT越え失敗」については、困っている人が大勢いらっしゃるようなので、誤解を恐れず「ちょっとだけ突っ込んだ解説」をしてみようと思います。
とはいえ、あくまでも「一般ユーザー向けコンテンツ」なので、かえって分かりにくくなる恐れがある場合は、あえて説明を省いたり、正式名称を使わなかったりします。
例えば、今回解説する「NAT越え」の【NAT】とは、「IPアドレス」と「ポート番号」の両方を変換する処理のことを指しているので、正しくは【NAPT】(Network Address Port Translation)や、【IPマスカレード】と表現するべきなのですが、「NAT」で統一します。
逆に、普段はわかりやすく「二重ルーター 」と表現する環境を、「NAT」がメインである今回は「多段NAT」と表現します。
いつもより難しく感じる所もあるかもしれませんが、なるべくわかりやすく、なにより「楽しく」読めるように頑張りますので、問題解決のキッカケになれば幸いです。
「NAT越え失敗」ってなーに?
「NATタイプB」でも発生するエラー
上図の「フルコーン」とか「アドレス/ポート制限コーン」とかは コチラ で解説していますので、ひとまず Switch のエラーコード「2618-0510」〜「2618-0520」が発生する原因は『NAT越え失敗』です。
- 【Switch】エラーコード「2618-0510」
- 【Switch】エラーコード「2618-0511」
- 【Switch】エラーコード「2618-0512」
- 【Switch】エラーコード「2618-0513」
- 【Switch】エラーコード「2618-0514」
- 【Switch】エラーコード「2618-0515」
- 【Switch】エラーコード「2618-0516」
- 【Switch】エラーコード「2618-0517」
- 【Switch】エラーコード「2618-0518」
- 【Switch】エラーコード「2618-0519」
- 【Switch】エラーコード「2618-0520」
※「Q(原因)」が全部同じなので「 A(対処法)」も全部同じです。
「NAT越え失敗」は、Switch本体やゲームソフトのエラーではなくて、『インターネットの通信技術が抱えている問題』です。
そのため、任天堂にはどうすることもできず、ユーザー側で「なるべくエラーが起きないように対策する」しかありません。
「Nintendo Switch の回線速度テスト」で確認できる『NATタイプ』は、利用しているインターネット回線の、「通信速度」や「応答速度」の評価ではなく、『NAT越えのしやすさ』を表す指標です。
すなわち、『NATタイプA』は「最もNAT越えに成功しやすい通信環境」を表し、『NATタイプB』は「Aよりも失敗しやすい通信環境」を表しています(図2)。
したがって、『NATタイプB』でも「NAT越え失敗」することがあり、『NATタイプC/D』ではまともにプレイできない頻度で「NAT越え失敗」します。
「NATタイプA」でも発生するエラー
「NATタイプA」は 、Switch に向けて送信されたパケットを「全部通す」通信環境なので、理論上は「NATタイプA同士」での『NAT越え失敗』はありません。
したがって、世界中の Switch が「NATタイプA」のアクセス制御下におかれた場合は、誰も「NAT越え失敗」しないことになります。
けれども、実際問題として、v6プラス環境の Switch は永遠に「NATタイプB」ですし、NURO光環境の Switch も初期設定※1では「NATタイプB」なので、アナタの通信環境が「NATタイプA」だとしても、それ以外の Switch が「NATタイプB」である限り、必ずいつかは「NAT越え失敗」します。
このため、「NAT越え失敗」でフレンドさんと遊べないときは、『みんなで通信環境を確認』したり、『得意な人が助けてあげる』など、いっしょに遊んでいるみんなが協力して対処する「チームワーク」が不可欠なのです。
※1)ONUが「HG8045Q」の場合は初期設定でも「NATタイプA」になります。
「通信速度」や「混雑」は関係ないエラー
インターネット回線の混雑で起こるエラーは、「2618-0201」や「2160-0202」などエラーコードが違いますし、エラーコードが出ないこともあります。(図3)
不特定多数がランダムにマッチングされるオンラインゲームの場合、週末の夜など回線が混雑する時間帯にエラーが発生する傾向にあるため、通信速度や混雑によるエラーと混同しがちですが、「NAT越え失敗」はあくまでも『NATタイプに起因するエラー』なので、「NATタイプ」が変わらない限り、「通信速度」や「混雑」に関係なく「NAT越え失敗」します。
「通信環境」を確認する
「NATタイプ」の確認
「NATタイプ」はルーター(NAT機器)のアクセス制御方式で決まりますが、アクセス制御方式はスペック表に記載されないので、以下の記事を参考に利用している通信環境の「NATタイプ」を確認してみましょう。
「Ping値(応答速度)」の測定
「NAT越え失敗」と「Ping値(応答速度)」に直接の関係はありませんが、通信環境の不安定による通信エラーと区別するために、「Ping値」の測定もオススメします。
「契約している回線」の確認
「一部のCATV回線業者」や「マンションに備え付けの無料インターネット」は、共用部分に業者が設置するルーターの影響で「NAT越え失敗」するケースがあります。
NATタイプ別「原因」と「対策」
①「NATタイプA(フルコーンNAT)」
ルーターのアクセス制御が「フルコーンNAT」の場合、Nintendo Switch は「NATタイプ A」になります。
【Switch A】の宛先「A.A.A.A:1000(グローバルIPアドレス:ポート番号)」に向かって送信されたパケットは、全て「NAT越え」に成功します。(図4)
マッチングサーバーを利用するので実際にはあり得ませんが、一度も通信したことがない【Switch C】から送信されたパケットも、宛先が「A.A.A.A:1000」であれば「NAT越え」に成功します。
このため、オンラインゲームでは、「NATタイプA(オープン)」のプレイヤーがホスト(同期を担当するプレイヤー)になることが推奨されています。
「NATタイプA」は、Switch に向けて送信されたパケットを『全部通過』させるので、理論的にはNATタイプAの人が原因で「NAT越え失敗」することはありません。
特定のフレンドさんとだけ「NAT越え失敗」する場合は、フレンドさんの「通信環境(NATタイプなど)」確認して、改善できることがあればお手伝いしてあげてください。
また、ゲームホストが「NATタイプB」でNAT越え失敗が起きる場合は、「NATタイプA」の人がホストプレイヤーを担当することで改善する可能性があります。
②「NATタイプB(アドレス制限コーンNAT)」
ルーターのアクセス制御が「アドレス制限コーンNAT」の場合、Nintendo Switch は「NATタイプ B」になります。
【Switch A】の宛先「A.A.A.A:1000(グローバルIPアドレス:ポート番号)」に向かって送信されたパケットのうち、通信をしたことがある【Switch B】のパケットのみ「NAT越え」に成功します。(図5)
「グローバルIPアドレス」が同じなら、ポート番号が変わっても「NAT越え」できます。
マッチングサーバーを利用するので実際にはあり得ませんが、一度も通信したことがない【Switch C】からのパケットは「NAT越え」できません。
※Switch の接続テストでは「NATタイプB」の『アドレス制限コーンNAT』と『ポート制限コーンNAT』を区別できません。
『アドレス制限コーンNAT』の「NATタイプB」は、「グローバルIPアドレス」はDHCPというプロトコルによって、「同じアドレスをできるだけ長く使うこと」になっているため、マルチプレイ中に突然グローバルIPアドレスが変わることは考えにくく、「NAT越え失敗」することは極めて低い通信環境です。
特定のフレンドさんとだけ「NAT越え失敗」する場合は、フレンドさんの「通信環境(NATタイプなど)」確認して、改善できることがあればお手伝いしてあげてください。
③「NATタイプB(ポート制限コーンNAT)」
ルーターのアクセス制御が「ポート制限コーンNAT」の場合も、Nintendo Switch は「NATタイプ B」になります。
【Switch A】の宛先「A.A.A.A:1000(グローバルIPアドレス:ポート番号)」に向かって送信されたパケットのうち、通信をしたことがある【Switch B】のパケットのみ「NAT越え」に成功します。(図6)
ただし、「グローバルIPアドレス」が同じでも「ポート番号」が変わると「NAT越え」できません。
マッチングサーバーを利用するので実際にはあり得ませんが、一度も通信したことがない【Switch C】からのパケットは「NAT越え」できません。
※Switch の接続テストでは「NATタイプB」の『アドレス制限コーンNAT』と『ポート制限コーンNAT』を区別できません。
『ポート制限コーンNAT』の「NATタイプB」でNAT越え失敗が起きる場合、ポートの有効期限切れが考えられます。
- 「全日本ルーター再起動選手権大会」を開催する
- ポートの有効期限切れで「NAT越え失敗」する場合、通常はしばらく時間を置けば改善しますが、ルーターの仕様やバグによって「同じエラーを繰り返す」ケースがあります。時間を置いても改善しない場合は、ルーターを再起動して「強制的にNATテーブルをクリア」することで改善する可能性があります。プラベなどでNAT越え失敗の犯人を特定すると気まずくなるので、みんなで「全日本ルーター再起動選手権大会」を開催してうやむやにしてしまいましょう。特定のフレンドさんとだけ「NAT越え失敗」する場合は、フレンドさんの「通信環境(NATタイプなど)」確認して、改善できることがあればお手伝いしてあげてください。
- 「NATタイプA」にしちゃう
- 「NATタイプA」の Switch は、通信相手のポート番号が変わってもNAT越えできます。
- ※v6プラス環境の Switch はポートを制限されているため「NATタイプA」にすることはできません。
④「NATタイプC/D(対称NAT)」
ルーターのアクセス制御が「対称NAT」の場合、Nintendo Switch は「NATタイプ C/D」になります(どっちになるか分かりません)。
「対称NAT」は、通信したことがある「グローバルIPアドレス」と「ポート番号」に対して「専用ポート」を用意し、その他の「グローバルIPアドレス」や「ポート番号」から届いたパケットは全て破棄します。(図7)
Switch がマルチプレイをするとき、最初に通信するのは、「マッチングサーバー(STUN)」のグローバルIPアドレスなので、グローバルIPアドレスが違う「その他のSwitch」とはNATを越えて通信することができなくなります。
「対称NAT」は Switch が利用する「STUN(マッチングサーバー)」を使ったNAT越えができないため、インターネット契約を見直す必要があります。
⑤「NATタイプC/D(多段NAT)」
ルーター(NAT機器)を2台接続することで、ルーターとしての機能(NAT)が二重に働いている状態のことを「多段NAT」といい、Nintendo Switch は「NATタイプ C/D」になります(どっちになるか分かりません)。
「多段NAT」は、ウェブサイトの閲覧や動画の視聴などは普通にできますが、「NAT越え」では問題が起こります。
(図8)では、【Switch A】のパケットが二段目のルーターの「1000番ポート」を開きましたが、一段目のルーターが開いたのは「2000番ポート」です。
インターネットから【Switch A】に向けてのパケットは、「1000番ポート」に送信されますが、インターネット側からは「2000番ポート」しか見えていないので、【Switch B】と【Switch C】のパケットは、「一段目ルーター」にはじかれ「NAT越え」できません。
- 多段NATを回避する
- フレッツ光のHGW(ホームゲートウェイ)や、NURO光のONUと「自前ルーター」の接続が間違っていて「多段NAT」になっている場合は正しく接続することで改善する場合があります。
- 回線業者を変更する
- 「マンションに備え付けのインターネット回線」や、一部の「CATV回線」には、共用部に設置されている業者ルーターが、「多段NAT」を引き起こしている場合は、インターネット回線の契約を見直す必要があります。
⑥「NATタイプC/D(集合住宅に備え付けのインターネット)」
マンションなど「集合住宅に備え付けの無料インターネット」を利用している場合、Nintendo Switch は「NATタイプ C/D」になるケースがあります(「NATタイプB」になる無料インターネットもあります)。
(上図9)は店長の新居のコンセントですが、「インターネット完備の物件」には有線LANの差込口があって、ここに自前のルーターを接続すると下の(下図10)のようなネットワークになります。
そうです、つまり「多段NAT」の通信環境になってしまうのです。
「多段NAT」は、ウェブサイトの閲覧や動画の視聴などは普通にできますが、「NAT越え」では問題が起こります。
(図11)では、【Switch A】のパケットが二段目のルーターの「1000番ポート」を開きましたが、一段目のルーターが開いたのは「2000番ポート」です。
インターネットから【Switch A】に向けてのパケットは、「1000番ポート」に送信されますが、インターネット側からは「2000番ポート」しか見えていないので、【Switch B】と【Switch C】のパケットは、「一段目ルーター」にはじかれ「NAT越え」できません。
1.「工事の必要がない回線」を利用する
インターネット完備の集合住宅は、「新たに回線を引くこと」を許可しないケースがあるので、SoftBank Air など「工事の必要がない回線」を Switch 用に契約する方法があります。
ただし、「Wi-Fi(無線LAN)」環境は、「スマブラ」や「スプラトゥーン」など競技性の高いオンラインゲームには向いていません。
2.大家さん(管理会社)に回線を引くことをお願いしてみる
ダメ元で「新たに回線を引くこと」をお願いしてみるのもいいかもしれません。ちなみに、店長は新居の管理会社にお願いしたら、あっさりOKをもらえました。
⑦「NATタイプF」
契約している「インターネット回線」の仕様で「UDPが使えない」場合、Nintendo Switch は「NATタイプ F」になります。
インターネットでデータを送受信するプロトコル(手順)には、「TCP(Transmission Control Protocol)」と、「UDP(User Datagram Protocol)」があります。
Switch のNAT越えは「UDPホールパンチング」という技術を応用したものなので、UDPが使えない環境では必ず「NAT越え失敗」します。
1.「VPNサービス」を利用する
インターリンク【マイIP/マイIP ソフトイーサ版】 などの「VPNサービス(有料)」を利用することで「UDPポートを借りて」NATを越える方法がありますが、ある程度のPCスキルと機材が必要になります。
2.回線業者を変更する
UDPが利用できない通信環境では、ほとんどのオンラインゲームをプレイできないため、インターネット回線の契約を見直す必要があるかもしれません。
ダメ元で「新たに回線を引くこと」をお願いしてみるのもいいかもしれません。ちなみに、店長は新居の管理会社にお願いしたら、あっさりOKをもらえました。
まとめ
長らく好評をいただいていた記事だったのですが、「バカみたいに長かった」ので、リニューアルを機に大幅に再編集しました(2022.05.31)。
いろんなサイト様から引用リンクをいただいているのに、かなり削ってしまいました、引用部分が無くなっていたらすみません(汗)。
そして、願わくはアナタの「NAT越え失敗」が無事に改善していますように。また、環境的に改善が不可能な場合は、1日でも早く改善可能な環境になるように祈っています。
もし、難しくて読み進められないフレンドさんがいたら、アナタのインテリジェンスと噛み砕いた解説でフォローしていただければ助かります。
最後までお付き合い下さってありがとうございます。それでは、素晴らしいゲームライフを♪
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